着物の豆知識その① 着物の産地~宮城県編~
- 精好仙台平
- 精好仙台平(せいごうせんだいひら)とは、宮城県仙台市で生産される絹織物で、男性用の高級袴地として有名です。紺や茶、灰色に縞模様が特徴で、撚りのない上質な生糸を強く打ち込むことからシワになりにくく、堅牢な生地に仕上がっています。江戸時代には幕府への献上品に用いられましたが、時代に伴い袴の需要が減少していることから、現在製造しているのは「合資会社仙台平」のみとなりました。2002年には重要無形文化財に指定されており、最も格の高い袴として礼装用からお稽古用の他、帯、和装小物などが販売されています。
- 栗駒正藍染
- 栗駒正藍染(くりこましょうあいぞめ)は、宮城県栗原市文字地区に伝わる染色技法で、現存する日本最古の自然染色法と言われています。一般的な藍染は、藍瓶を火で温めながら発酵の加減を調整するため年中染めることができますが、栗駒正藍染は人工的な加熱は一切行わず、気温を利用して自然発酵を促すため初夏の間しか染めることができません。また、正藍染は原料の藍の栽培から糸績み、染め織りまでを一貫して一人で行っているのが特徴で、現在は昭和30年に重要無形文化財保持者に認定された千葉あやのさんの家系でのみ受け継がれています。
- 白石紙布
- 白石紙布(しろいししふ)とは、宮城県白石市で生産されている織物の一種で、和紙を材料として織られています。その製法は、白石市の特産品である白石和紙という紙を細かく裁断し、縒りをかけて糸状にしたものを用いて織られます。江戸時代では仙台藩の献上品として盛んに生産されていましたが、明治以降は衰退を辿り一時期は途絶えました。しかし後に佐藤忠太郎が復活させ、現在は僅かな職人たちによって、夏の着物や帯、うちわ、カーディガンなどが生産されています。ちなみに素材は紙ですが丈夫で洗濯も可能です。
- 白石紙子
- 白石紙子(しろいしかみこ)とは、宮城県白石市で生産されている白石和紙から作られた衣服のことです。紙を糸状にして織る白石紙布と違い、白石紙子は紙のまま衣服に仕立てます。その製法はまず、何枚かの紙を貼り合わせて柔らかくなるまでよく揉み、その後柿渋を塗って仕上げたもので、強度と耐久性に優れています。また、素材は紙ですが風を通さないため、昔は武士の防寒着や僧侶衣、庶民の野良着などに用いられていました。現在は衣服としてではなく、ハンドバッグやポーチ、名刺入れなどの日常アイテムとして生産されています。
着物の豆知識その② 染めの着物と織りの着物の違いについて
着物には「染めの着物」と「織りの着物」の二種類があります。
この2つの違いをわかっていれば着物の格が見えてくるため、フォーマルとカジュアルで迷うことはありません。
染めの着物
染めの着物とは、生糸で織られた白い生地を染めた物のことです。
まず白い生糸で生地を織り、その後色や柄を施して仕上げます。代表的なものでは筆や刷毛を使って華麗な絵柄を描く友禅染め、型紙を使って文様を描く型染め、布を糸で絞って文様を表す絞り染めなどがあります。
また、手触りがなめらかで柔らかいことから「やわらかもの」と呼ばれ、織りの着物よりも格が高くなります。
振袖・留袖・訪問着・付け下げ・色無地・小紋がこれに該当し、結婚式などのフォーマルな場からセミフォーマル~カジュアルまで格に合わせて着用できます。
織りの着物
織りの着物とは、先に紬糸や木綿糸に染色を施してから模様を織った物で、光沢感はなく硬めの手触りになります。紬や木綿、ウールなどが該当し、染めの着物よりも格は低くなります。代表的なものでは、大島紬や結城紬、お召などがあり、主に観劇や友人との食事会など、少しおしゃれをしたい時のカジュアルな着物になります。尚、大島紬や結城紬のような高級品でも格は普段着に該当するため、フォーマルな場には着て行けません。
<ただし、帯ではこの逆になる>
着物の場合は染めの方が格は高いのですが、帯の場合は逆になり、織りの方が格は高くなります。
織りの帯:袋帯・丸帯など
織りの帯は金糸や銀糸を織り込んだ豪華な模様が特徴で、主に振袖や留袖に合わせてフォーマルなシーンで活用します。
染めの帯:名古屋帯
一方、染めの帯は染めの着物と違ってカジュアル向けになり、紬や小紋、ウールなどの普段着用の着物に合わせます。
着ていく場所やTPOに合わせてコーディネートは変わってきますが、
結婚式などのフォーマルなシーン:染めの着物&織りの帯
食事会などのカジュアルなシーン:織りの着物&染めの帯
と覚えておくと良いでしょう。