着物の豆知識その① 着物の産地~石川県編~
- 加賀友禅
- 加賀友禅(かがゆうぜん)とは、石川県金沢市周辺で作られている友禅染の着物のことで、京友禅や東京友禅と並んで日本三大友禅のひとつに数えられています。江戸時代中期に京友禅の創始者である宮崎友禅斉から指導を受けて技法を確立していったと言われており、柄は絵画のように写実的な草花模様が中心です。その手法は、加賀五彩という「臙脂」「藍」「黄土」「緑」「紫(または墨)」の5色を基調とした色使いで、模様の下絵から彩色までを全て一人で手描きしていきます。また、京友禅と違って豪華な刺繍や箔押しは使わずに、外側から内側に向けて立体感を出すぼかしや、木の葉の虫食いなど綺麗でないものを敢えて描くなど、リアルさを追求した表現を行っているのが特徴です。製法に大変手間がかかっているゆえに高価で、有名作家の一点物なら100万円以上、人間国宝クラスだと一千万円以上することもあります。
- 牛首紬
- 牛首紬(うしくびつむぎ)は石川県白石市白峰村で作られている織物で、白峰の旧地名である牛首村が名前の由来となっています。牛首紬は二頭の蚕が共同して作った玉繭から糸を紡いだ玉糸で織られているため、生地は節が多く、弾力性と耐久性、伸縮性を兼ね備えています。養蚕は冬の農家の貴重な収入源だったため、上質な繭は出荷し、商品にならない玉繭はくず繭として庶民の普段着に使われていましたが、現在では大島紬・結城紬と並ぶ代表的な着物となっており伝統的工芸品にも指定されています。また、釘を引っ掛けても釘の方が抜けると言われるほど丈夫で、別名首抜き紬とも呼ばれています。
- 能登上布
- 能登上布(のとじょうふ)とは、石川県の能登、羽咋地方で織られる麻の織物で、石川県無形文化財に指定されています。絣模様と麻の持つシャリ感、通気性の良いサラッとした肌触りが特徴で、主に夏の着物生地として生産されています。その起源は古く、日本書紀に記されている崇神天皇の皇女が野生の真麻で糸を作り、この地の女性に機織りの技術を教えたことが始まりと言われています。ちなみに上布とは上等な麻織物のことで、1907年(明治40年)に皇室への献上品となったことから能登上布と呼ばれるようになりました。このことから生産は盛んになり、昭和初期には140件ほどの織元がありましたが、やがて時代の変化に伴い減少し、現在では山崎麻織物工房1件のみとなっています。
- 小松綸子
- 小松綸子(こまつりんず)とは、石川県小松市で生産されている絹織物です。なめらかで光沢があり、色の組み合わせによって様々な紋様を表現しているのが特徴で、室町時代には将軍家に献上されていました。明治時代には技術の発展とともに様々な紋織物が生産され、大正時代に入るとその技術を土台に小松綸子が誕生しました。しかし生産が盛んだったのは昭和中期頃までで、昭和50年代になると中国などの安価な輸入織物が入ってきたことや、着物の需要が低下したことによって衰退していきました。そのこともあってか、最近では着物の他にカーテンなどのインテリア製品なども生産されています。
着物の豆知識その② 季節によって変わる着物の種類
夏はTシャツ、冬はセーターというように、着物にも季節に合わせて厚手のものと薄手のものがあります。
袷(10月~翌年5月)
袷(あわせ)の着物は胴裏、袖裏、裾回し等に裏地を付けて仕立てます。表の生地と裏地の2枚を縫い合わせているので透け感はなく、重量感があります。着られる期間が長いので、和服の中では最もポピュラーな位置づけです。
単衣(6月・9月)
単衣(ひとえ)は袷の裏地が付いていないタイプで、表の生地1枚だけになります。裏地が無い分軽くて涼しいのが特徴で、季節の変わり目である6月と9月に着用します。
薄物(7月・8月)
薄物(うすもの)は絽(ろ)や紗(しゃ)などの透け感がある生地の着物で、盛夏の7月・8月に着用します。薄手の素材のため涼しく着られますが、その分柄が栄えないので写真写りはイマイチになります。ただし、これはエアコンが無かった時代の決まり事ですし、最近は温暖化の影響で5月や10月でも夏のように暑い日があるので、決まりに合わせて汗だくで我慢するよりも、気候と自分の体質に合わせてチョイスすると良いでしょう。