着物の豆知識その① 着物の産地~群馬県編~
- 桐生織
- 群馬県桐生市の特産・桐生織は、織物の中でも歴史が深く、桓武天皇のころ、奈良時代にまでさかのぼります。絹織物の技術をこの地に伝えたとされる「白滝姫伝説」という伝承が残されており、現在でも白滝姫を祀った「白滝神社」が市内にあります。全国に桐生織の名前が広まったのは、1600年の関ヶ原の合戦。徳川家康が桐生の白絹の旗を用いたことがその要因と言われています。現在では「西の西陣・東の桐生」といわれる桐生織ですが、当時はすでに江戸に西陣織が普及しており、桐生織は織機・デザインの技術革新が迫られていました。以後、西陣の技術の導入による生産量の増大や技術面の向上で、市場を開拓してき、高級美術織物として成長を遂げました。明治維新以降も時代とともに技術革新を行うことで、桐生織は全国的に有名・そして価値の高い織物となりました。現在では、着物はもちろん様々な製品が生産されており、またハリウッド映画「SAYURI」の衣装にも使用されるなど、国内外から指示される織物の1つとなりました。
- 伊勢崎織
- 国の伝統工芸品・伊勢崎絣を代表に、群馬県伊勢崎地方で生産されている絹織物(太織・紬・縞物など)を伊勢崎織と呼びます。この地方ではもともと養蚕が盛んで、もともと自家用で織られていた太織が18世紀ごろより商品化され、昭和初期頃にかけて全国に広がっていきました。近年では、伝統技法が受け継がれるとともに、ネクタイやのれんなどの小物類も作られており、身近な伝統工芸品として、お土産などにも重宝されています。
- 中野絣
- 昭和52年に途絶えた、中野絣。かつて群馬県邑楽郡や館林市で生産され、「西の大和絣、東の中野絣」と称された中野絣ですが、太平洋戦争による綿の統制や生活の洋風化などにより衰退していきました。現在では、保存会が立ちあげられるなどの活動が行われており、入手困難・幻の織物となってしまった中野絣は、たいへん貴重といえるでしょう。
着物の豆知識その② 春夏秋冬、四季を楽しむ着物
夏の浴衣や、成人式の振袖、卒業式の袴など…現代でも着物を着るシーンはありますが、その回数は決して多くはありません。着物は本来、日本の伝統衣装。四季それぞれの着物の楽しみ方をご紹介します。
春・秋
着物は袷(あわせ)の時期となり、春・秋と冬にも着用します。また5月頃や10月頃は、地域や気温によって単衣を選ぶこともあります。一方で、現在は、空調の行き届いたホテル・レストランなどでは夏でも袷の着物が可能な場合もあるため、主催者の意向などに沿った着物選びをしましょう。また、季節ごとに着物の色合いの変化も楽しむことができます。徐々に春めいてくる3月頃はピンクや若草色などの淡い色、桜の季節以降は、藤色や緑色、夏が近づいてくる5月頃は、青系の涼しげな色を取り入れるとよいでしょう。また、秋の着物を着るのはお彼岸を過ぎたころがよいでしょう。深みのある赤色や茶色など、秋になると色づく紅葉や果実などをイメージされる色合いが素敵です。銀杏の葉のようなからし色もオススメです。
冬
秋の終わりから冬にかけて、自然の色が少なくなっていきます。しかし、冬は華やかなイベントも多く、現代はイルミネーションなど街は華やかになっていく季節です。着物の色はシンプルに、華やかな帯や小物をまとうことで、一層着物の美しさが際立ちます。冬も袷(あわせ)を着用しますが、ショールや羽織・コートなどを着用するので、この時期ならではのコーディネートを楽しむことができます。
夏
夏は、単衣(ひとえ)の時期です。単衣とは、裏地のない一枚で仕立てたもので、特に盛夏には、麻などの透ける素材の涼しげな着物が好まれています。色味は、モノトーンや薄い色味がオススメです。また、涼を感じさせるために雪輪など冬のモチーフなどを帯や小物にまとうことで、一層着こなしの幅が広がりそうですね。