その①
着物の産地~福岡県編~
- 博多織
- 博多織(はかたおり)とは、福岡県福岡市の博多地区を中心に生産されている絹織物です。
細い経糸(たていと)を多く使い、太い緯糸(よこいと)を強く打ち込んで柄が浮き出たように織るのが特徴で、この製法から生地に厚みや張りが出るため、帯を締めた時にキュッキュッという絹鳴りがするそうです。
この厚みや緩みにくい特性から、昔は刀を差す武士の帯として愛用され、現在ではその特性を活かしてネクタイや財布などの小物類も販売されています。
また、博多織で有名なものに「献上博多」という帯地があります。
真言宗の仏具である「独鈷」と「華皿」をモチーフにした文様で、これは江戸時代、筑前福岡藩の初代藩主黒田長政によって幕府に献上されたことから来ています。
青・赤・黄・紫・紺の5つの色を献上したころから「五色献上」とも呼ばれています。
この5色は森羅万象の陰陽五行説「木・火・土・金・水」と結びつけており、青は仁(慈悲)、赤は礼(謙虚)、黄は信(信頼)、紫は徳(品格)、紺は智(知識)を象徴しています。
- 久留米絣
- 久留米絣(くるめかすり)は、福岡県久留米市周辺で生産されている木綿絣で、伊予絣、備後絣とともに日本三大絣の一つと呼ばれています。
1957年に国の重要無形文化財、1976年には伝統工芸品に指定されました。
綿素材のしなやかで肌触りの良い生地にかすれたような模様、洗うほどに美しさが増すと言われる藍色が特徴で、最近では化学染料を使ったピンクやオレンジなどの明るい発色に、ドットやクロスなどのポップな柄の物も登場しています。
そんな久留米絣を発案したのは何と、当時12~13歳の少女というのだから驚きです。
1800年頃、織物が得意な井上伝という少女がある日、古着にできた白い斑点を見つけます。気になった伝は糸を解き、染料が抜けてできたその斑点模様を調べました。
そして、それと同じにように白糸を括って藍で染め、まだらな色になった糸で織り上げる技法を生み出しました。
この織物の模様は、所々がかすれて見えたことから「加寿利(かすり)」と名付けられ、のちに久留米絣として全国に広まるようになりました。
現在は昔ながらの藍染めの着物はもちろん、若者向けの浴衣や洋服、バッグなども生産されています。
- 小倉織
- 小倉織(こくらおり)は、福岡県北九州市で生産されている綿織物です。小倉木綿とも呼ばれています。
縦に入った縞模様が特徴で、良質な木綿糸を使用していることから滑らかな質感と丈夫さを兼ね備えています。昔はその特性から武士の袴や帯として、明治時代以降は作業着や男子学生の夏の制服として使用されていました。
しかし昭和初期に入ると生産が途絶え、一度は幻の織物となってしまうのですが、1984年に染織家の築城則子氏が試行錯誤の末に復元しました。
再び生産されるようになった小倉織は現在、着物の他に風呂敷やバッグ、ポーチなど、丈夫な素材を活かした小物類も販売されています。
その②
ポリエステルの着物とウールの着物について
昔は普段着として日本人に愛用されてきた着物ですが、洋服が一般となった現代では、冠婚葬祭などの特別な日にだけ着る高価な物となりました。
しかし、正絹の着物は滅多に着る機会がなくお手入れも大変ですが、ポリエステルやウール素材の着物なら安価でお手入れ簡単、汚れを気にすることなく着られることから、着物初心者や若者を中心に人気が出てきています。
こちらでは、そんな便利なポリエステルの着物とウールの着物についてご紹介します。
- ポリエステルの着物とは
- ポリエステルは石油を原料とした合成繊維です。安価で水や汚れに強く、虫食いやカビが発生しにくいのが特徴です。
正絹の欠点全てを覆す素材で、最近は技術も向上したことからパッと見では正絹と区別がつかない高品質な物もあります。
そのメリットからお稽古事や仕事用に向いており、雨の日でも汚れを気にすることなく着用できます。
しかし通気性が悪いため夏は暑く、冬は寒くて静電気が起きやすいのが難点です。通気性が良く、冬は暖かい正絹とは正反対ということです。
ですが、汗で汚れてもネットに入れて手洗いコースで洗濯できますし、シワになりにくいのでアイロンがけも簡単です。また、冬場は静電気防止スプレーをかければある程度防げるので、デメリットはありますがやはり便利な着物です。
- ウールの着物とは
- ウールは羊毛を原料とする動物繊維の一種です。毛糸は主にセーターや毛布に使用されるのでモコモコの着物を想像してしまいそうですが、見た目は普通の着物と変わりません。ただ、よく見ると繊維がツンツンと毛羽立っているのが特徴です。
ウールの着物はとても暖かく値段もお手頃、お手入れもウールのセーターと同じ要領でできますので真冬には大活躍します。
虫食いしやすいのが難点ですが、保管の際にフタ付きのプラスチックケースに防虫剤を入れて密封しておけば大丈夫です。
現在は着物離れに伴って生産が減りましたが、着物で生活していた昭和の時代は爆発的に普及していました。
最近は軽くてカジュアルな可愛い柄も増えていますので、真冬の普段着用着物として、若い世代にも定着しつつあります。